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2016.07.18

【時評】天皇陛下の退位問題から考える

参議院選挙が終わってすぐ、天皇陛下の生前退位のお気持ちがスクープされ、近いうちに自らの職務についてのお気持ちを明らかにされるよしにございます。
日頃から年号を使わず、皇太子殿下は浩宮、秋篠宮に至っては「あーや」と呼び続けているような不敬な私ですが、改憲勢力が衆参2/3を上回り極右的改憲が現実に近づいている時期だけに、日本国憲法の最初に出てくる天皇のあり方について、考えておきたいと思います。

先にハッキリさせておきますが、私は現行の天皇制そのものに反対です。
万世一系の皇統と言われるものの、大学時代の恩師である水野裕先生によれば三王朝交替説というように皇統が途切れているという説もあり、控えめに言っても崇神天皇以前の10代については存在自体が疑わしいというのに、それを21世紀になってなお象徴として推戴することはいかがなものかと思っています。
その生きながらえてきた皇統も、戦後の大量の臣籍降下で宮家の数が減り、さらには長年の近親的な婚姻のせいか後継ぎに恵まれない、男子が生まれないという状況にあり、悠仁親王に万が一のことがあって愛子内親王が婿をもらうことになれば、それは英国でいうところのウィンザー朝の交替と同義ですので、万世一系とは言えなくなると思います。
そのような事態になれば、女系天皇を論ずるのではなく、新たな形の元首制を考えていくのが、天皇家の皆様にとっても幸せなことなのではないでしょうか。
今回のことでも、陛下がお気持ちを伝えるにしても退位についてふれるのは国政に権能をふるってはならないとする憲法第4条に抵触するということになるようで、ご自身の健康や体力のことでおやめになりたいということですら言い出せないというのでは、国民統合の象徴とされながら基本的人権すら認められない唯一の国民ということになっているのです。
天皇という職を特定の一族に押しつけ、そこにはさまざまなメリットもあるにせよ非常に大きなプレッシャーばかりでなく、できないことしてはならないことを並べ立てているのは、憲法そのものがおかしくありませんか?

もう一つ、安冨歩さんが『満洲暴走』という新書の中で、天皇制は国体護持に象徴されるように「守られる王」という性質になっているが、王とは本来国民を「守る王」でなければならず、タイやブータンの国王はそのような意味で慕われていると指摘していました。
その国体護持という名分をもって戦争責任をうやむやにし、敗戦そのものを忘れようとする永続敗戦レジームが続いていて目的化しているからこそ日本がおかしくなっているのだという白井聡さんの論考にも大いに共感するところですが、安倍政権がどんなに対米従属して憲法を復古的改悪しようと思っても、肝心の天皇陛下ご自身は敗戦をわが責任と受けとめられて80歳を超えても慰霊に足を運び、また東日本大震災についても日帰りでの訪問で被災者を励まし続けられるお姿からは、受動的に「守られる」存在から自らの意志を持って「守る」とまではいかずとも「癒す」存在へと変わられているのをつくづく思います。
戦争の遺族も被災者も、総理がとってつけたように来たのは喜んでいるようには見えませんが、陛下が同じ目線で声をかけられてくださるのには涙を流すほど感激する違いがあるのは、両者の心の持ちようの違いを感じるからだと思っています。

その意味では、今回の議論をもとに天皇制もしくは今後の元首のあり方を見直す時期に来ていると思いますし、まずは天皇であることをもって基本的人権も認められない憲法の不備を考えてみるべきだと思います。

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