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2015.07.24

【時評】「ジパング」再読

寝苦しい暑い夜が続いているせいで、かわぐちかいじ「ジパング」を読み直しています。
2000年から9年間にわたる連載が43巻のコミックスとなっているのですが、あらすじとしては海上自衛隊のイージス艦「みらい」がタイムスリップして太平洋戦争の分水嶺となったミッドウェイ海戦の最中に現れるところから歴史の歯車が狂いだしていくというストーリーです。

まず考えさせられるのは、自衛隊が戦闘に巻きこまれるとどうなるかを描いていることです。
連載当時は今よりも周辺事態に危険を感じてはいないご時世だったわけですが、それをふまえて「みらい」の乗員は専守防衛の意識に塗り固められており、可能な限り敵味方にかかわらず生命を尊重する行動で対処しようとします。
その意識と実際の戦闘を体験したことがないがために旧式ながらも命がけで向かってくる相手に対応しきれずに落命したり、最低限の被害にとどめながらも相手を死なせていく体験を重ねていくことで、一時的には帝国海軍と共同作戦を取るところまで進んでいきます。
今国会で論議されている戦争法案が成立することになれば、集団的自衛権による後方支援に徹すると言っていても後方支援の兵站こそ狙われるのが戦闘の常識と聞くことがありますし、そこで戦死者が出た場合に現場で応戦しないわけにはいかなくなったり敵を取らねばという思いが強まったりすることで、自衛隊員が兵隊の気持ちになってしまうのが不可避であるのを、先んじて描いているのを今さら理解したところです。
私個人はこれから成人していく坊主がいる立場として、単に戦争反対というより息子を戦場に行かせるわけにはいかないという思いが強いのですが、法案成立でリスクが高まるのは現役の自衛官なのですから、専守防衛の思いで就役しているはずの人たちが今どんな思いで国会審議を見守っているのか、気になるところです。

そして、時代が太平洋戦争のど真ん中、舞台は連合艦隊や満洲国果てにはナチスドイツまで拡がるスケールの中で、戦争とは何かを描こうとしているストーリーは、その戦争の敗戦から70年という節目の年だからこそ読まれる意義があると思います。
いきおい軍や政治にかかわる顔ぶれが連なり、そこに作者のひいきが加わってのフィクションですから一面の歴史物語であるのはまぎれもない事実ですが、単なる教科書的記述や年表的知識だけは身にしみて感じたり考えることにはつながらないだけに、このような入口があるのは大事なことだと思います。
そこから、この節目の年に戦争の事実を伝える書物(「永遠の0」のような付け焼き刃のフィクションではなく)を手にしたり、身近にいる数少なくなった戦争体験者からお話を聞くといった学びにつなげてもらえればと思います。

あなたは、戦争を知り考えるために、どんな本をすすめますか?

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