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2015.07.20

【時評】「多数決を疑う」と「デモクラティア」

7/14の朝日新聞の記事「多数決って本当に民主的? 問い直す漫画や評論相次ぐ」に触発されて、以前から読もうと思っていた酒井豊貴の新書「多数決を疑う」と間瀬元朗のコミックス「デモクラティア」をまとめ読みしました。
戦争法案では世論調査の反対を無視して強行採決、新国立競技場問題では一転して国民に祝福されないとしてザハ案を白紙撤回と、安倍政権による民意の勝手な使い回しが露骨になる中だけに、民意を政治に反映させるということについて考えたいと思います。

「デモクラティア」はヒトガタという300人の登録者の意志を多数決で集約して言動が決定されるアンドロイドをめぐるストーリーで、そのロジックが不完全であるために想定外の行動となったり、登録者間の感情のぶつかり合いが「炎上」を引き起こしたりと、多数決よりも意見をぶつけ合うことの難しさが描かれていました。
一方、「多数決を疑う」では、社会的選択理論の進化を紹介しながら一人1票の選挙という方法とりわけ大選挙区制で行われる議員選挙では民意が反映されないことや、さらに踏みこんで小平市の都道問題を引き合いに執行権が強くなりすぎている弊害を解決する必要性などを示していて、過半数が投票しない選挙で票を集められずに落選した立場として非常に関心を持って読了しました。
もう一つ大きな指摘として、戦争法案では集団的自衛権の解釈改憲が問題とされていますが、現在の衆議院の小選挙区制は3割に満たない得票率でも8割近い議席を得ることが可能となる制度であり、改憲の発議に必要な2/3以上の賛成を簡単に手に入れられるのは公職選挙法によって憲法が左右される状況を生み出していることを明らかにしていますが、今提案されている参議院の合区案では一人区化がさらに進むことになるだけに、国民投票では64%以上の賛成が必要とすべきだという提言は非常に重いものだと思います。

考えてみれば、一人1票が民意反映の基礎のように思われていますが、戦後最初の総選挙は一人2票制で実施されたという前例もありますし、国際的に調べれば多様な選挙方法があることを「多数決を疑う」から知ることもできます。
また、多数決にしても、新弘前市の前に検討されて合意寸前であった旧中津軽郡3町村による合併が、最後の岩木町議会が委員長を除いて単独で存続=2/3町村で合併=8/広域で合併=7と分かれていたのを、委員長が一気に3町村合併の賛否を問うたために8対9で否決されたのですが、他の2村と同じくまず合併か存続下の賛否を問い、その後に合併の範囲を問えば存続派が3町村に回ることになったはずという重く苦い記憶があるだけに、本当の民意を形にする難しさを解決する方策は検討してしかべきだと得心しました。
ただし、憲法改正はもちろん地方政治の選挙制度を見直すにしても、今の法や条例に沿って改正案が可決されなければ変わることにはなりませんし、「多数決を疑う」でOECD諸国で社会的選択理論にもとづいて周波数オークションを実施していない唯一の国が日本であることを嘆いていていたとおり、日本最大の岩盤規制は政治そのものだと思わざるを得ません。

それでも、政治を変える、その第一歩として制度を見直すこと、民意を反映させるという根幹から考えること、これは大事な課題と肝に銘じて取り組むべき課題です。

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